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【インタビュー】島内×島外のフレッシュなチームが描く島のミライとは?
2024/11/27
島ぐらし
2024年春、新島に注目のチーム<るとり>が誕生しました。島の将来を担う若手と、さまざまな経歴を持つ島外のメンバーが集まり、農業×美をかけあわせたヘルスツーリズムの実現をめざして法人化。遊休農地の開墾からチャレンジをスタートし、宿の開業や体験プランの実施、農作物を使った商品開発などの事業展開も予定されています。島が抱える課題に正面から向き合いながら、若手たちが描く島の「ワクワクするミライ」とはどんなものでしょう? Flowlifeでは2度めのインタビューとなる、代表の斉木佑介さんにお話をうかがいました。
“農家じゃない”から生まれる新しいアイデア
るとり結成のきっかけは、2023年度に新島で開催されたスタートアッププログラム「100DIVE」でした。地域の当事者と全国から集まった参加者がチームをつくり、3か月間で地域課題を解決するためのビジネスを創出するというもので、新島村のテーマは「農業」。島の農産物に付加価値をつけることで、1,000万円を稼ぐビジネスを考えるというミッションでした。
斉木さんは、そこに島側から参加した一人。新島に移住して約10年、現在は居酒屋「和み処サンシャイン」を営みながら、2023年春からは新島の海水から塩をつくる製塩業も手がけています。コロナ禍で店を開けられなくなったことを機に、食の大切さを見つめ直したという斉木さん。生産者としての道を歩み始めた矢先、関係者から「100DIVEに参加しないか」と声をかけられました。
「農業は飲食業と親和性も高いし、製塩業を始めたことで『生産者になる』ことが自分の中で大きなテーマになっていました。農業はいずれやりたいと思っていましたが、関わるのはもうちょっと先かなと考えていたし、知識もないので最初は僕でいいんですか?という感じでしたね。ただ、島の農家さんたちは『若手のアイデアが欲しい』という思いがあったようで、それならと軽い気持ちで参加を決めました」
フタを開けてみれば、参加者の大半が農業経験ゼロ。新島のことすら知らない4人のチームメンバーと、島の農業ビジネスをどうやって考えていいのか途方に暮れたと斉木さんはいいます。「最初のプレゼンでは審査員からケチョンケチョンにたたかれましたね。でも、おかげでスイッチが入ったというか、『めちゃくちゃ悔しい。やってやろうじゃねえか』と全員が同じ意識になったのが大きかった」。そこから夜な夜なオンライン会議する日々が始まりました。
「農×美」というキーワードにワクワクした
農業について情報を集めたり、農家さんにヒアリングしたりして意見を出し合ってはみるものの、ピンとくるアイデアにたどりつけなかったと斉木さんいいます。別の視点から突破口を探せないかと、島のいろんな人に会いにいっては相談する日々。そんなあるとき、村の移住定住相談窓口で、地域活性化の取り組みを行う先輩組織でもあった新島OIGIEを訪れ、薬草ブランド「mo・ya-i」の金澤佑香さんを紹介されたのが転機になりました。
「金澤さんは以前新島に住んでいた方で、今は内地で新島産の明日葉や僕がつくっている塩を使ったオリジナルのバスソルトやよもぎ蒸し(薬草を使った温熱療法)を開発されていました。それまで農作物=食べ物としか考えていなかったので、金澤さんと話したことで『食べること以外で農作物に付加価値をつける』という可能性に初めて気づいたんです。そこから出てきたのが、農業に美をかけあわせるというアイデアでした」
斉木さんのチームが見出した答えは「美に特化したアグリツーリズム」。宿を運営しながら、島の食材を使ったカラダにいい料理や、畑で土や野菜に触れる体験ツアーなどを提供する「島でキレイに、健やかになる旅」でした。新島で100DIVEに取り組んだ3チームの中から、このビジネスアイデアが最優秀賞を受賞。事業化をめざして参加者を中心にメンバーが集まり、2024年夏に共同出資による合同会社るとりが設立されました。
島の中から外から、関わるカラフルなメンバーたち
るとりでは農業、宿泊業、体験業を3つの柱とし、斉木さんを含めて7人が中心メンバーとして活動しています。新島在住メンバーは斉木さんと、新島の焼酎ブランド「嶋自慢」の蔵人として酒づくりを手がける櫻井浩司さん。主に農作業を担当しています。
中村孝也さんは内地と新島を行き来しながら、農作業や商品開発、営業活動を展開中。
萩野岳士さんと荒川真帆さんは、内地から経営戦略と宿の開業準備に取りかかっています。
奥田剛さんは東京で広報と制作を担当し、江龍伝崇大さんは佐渡島から販路拡大をサポート。場所も職種も超えた“越境人材”が、るとりの活動を支えています。
「出会って1年もたたない人たちと事業をおこすことについては、楽しみのほうが大きいです。普段まったく関わらないはずの職業の人と何かできることはめちゃくちゃ面白いし、本業の飲食業につながっていることもすでに出てきています。何より僕自身が農×美というキーワードにワクワクしたんですよね。
実際に農業を始めてみて、自分たちは恵まれているなと思います。農家さんたちは何でも教えてくださるし、25歳前後の若い世代が畑をめちゃくちゃ手伝ってくれているんですよ。遊休農地の開墾は若手の力の見せどころだと思うので、今後もできるだけ取り組んでいきたいです。
地域の事業者からも応援をいただいていて、感謝しかありません。やりたいことも、できることもたくさんあるので、堅実に、泥だらけになりながら進んでいきたいです」
と斉木さん。移住でもなく、旅でもない、新しいカタチで島に関わるFlowlifeな若手たちの今後が楽しみです。
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